フラット35の凄さ

明日にでも、実際の物件へ案内をしましょう、ということでIさんは帰っていった。 連絡先を尋ねたのだが、今は自動車で寝泊まりをしているので住所はない、と言われ、携帯電話の番号だけを教えてくれた。
ほどなく、G・K社長とSさんが戻ってきた。 町内会が主催した政治家の講演会に出席してきたのである。
ノルマで人数をどうしても二人出さなければならなかったので、Sさんまで駆り出されたのだ。 「どうでした?」私はSさんに尋ねた。

「さあ、どうだったかしら」Sさんはお茶をいれながら笑った。 「半分以上は眠っていたな」G・K社長が代わりに答えた。
「まあ、あいつを当選させたところで、商店街に大きなメリットがあるとは思えん。 昔みたいに、駐車違反をなんとか免除してくれるとか、そういった融通はこの頃、利かなくなったからなあ」「あ、あの、お客さんが来ました」「おお、それは良かった、店を留守にしなくて…」私はさっそくIさんのことを社長に報告した。
「危なそうな話だな」というのがG・K社長のコメントだった。 この業界ではそうなのである。
ただ、我々不動産屋は仲介をするだけだ。 危ない場合に困るのは、土地や家屋を貸す側である。
トラブルがあった場合にも、不動産屋が金銭的な損失を受けることは稀だ。 しかし、信頼を失うことにはなるだろうから、気をつけなければならない。
翌日、Iさんは約束の時間に店にやってきた。 G・K社長もいたので、Sさんが出したお茶を飲みながら、十分ほどそこで雑談をした。
Iさんの実家は長野の山奥で農家だという。 両親がまだ健在だが、そろそろ仕事ができなくなり、田畑の半分近くが荒れている、という話を聞いた。
こういったことは、G・K社長がきき出した情報である。 世間話ではない、ちゃんとIさんの資産について確かめようとしているのだ。

さすがに社長だ、と私は感心して聞いていた。 それから、Iさんと二人で出かけることになった。
私の車に乗って、まずは近くの国道沿いにある倉庫を見にいった。 灰色のスレートがところどころ黒く汚れている、かなり古そうな建物だった。
道路に面した部分が駐車場になっているものの、乗用車なら四台が限度だ。 電話をかけておいたので、管理人も待っていて、鍵を開けてくれた。
中はがらんとした空間で、天井が高い。

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